偉大な会社を蝕む採用のミス

ものを学ぶうえで最良の好機というのは教科書や講義からは得られないものだ。むしろ、志を同じくする起業家たちが、日々の会社運営の中で直面する現実的な苦悩を見聞きし、その教訓を吸収したり自分なりに分析したりすることによって、学べることは多い。

そこで、スモール・ジャイアンツでは、「小さくても偉大な会社」を志し、その価値観を実践している企業数社に赴き調査を行った。対象となったのは家族経営のような小さな会社や従業員を350人も雇用し、3,500万ドルの年商を上げる大ぶりな企業まで様々だ。これらの会社の経営者たちは、自らの会社を今ある姿に育て上げてきた長年の経験を踏まえ、その過程で経てきた良いことも悪いこともオープンに語ってくれた。

本記事では、スモール・ジャイアンツ企業が採用について直面する失敗や難題にフォーカスし、中でも特に重要なものについて述べた。採用ミスが会社にもたらすダメージの中でも、特に深刻なのは一体何なのか。

チームのやる気を損ねる

誤って採用された社員(つまり、企業文化に合わない社員)の影響は、まるでウイルスのように社内に感染していく。仮に現状が良いものであったとしても、それを蝕み、機能を減退させ、廃頽へと向かわせる威力をもっている。企業文化を徐々に破壊し、楽しい職場を損ねるだけではなく、やがて社外へと感染して、顧客にも影響を及ぼすようになる。優れた企業文化や人間関係、チームワークを重んじるスモール・ジャイアンツのような環境においては、やる気の減退がもたらすダメージは極めて多大だ。

財務的損失を与える

採用ミスは環境に影響を与えるだけではなく、財務にも損失を与える。そして、それは一度きりではない。

つまり、その従業員の在籍中だけでなく、雇用終了後まで影響をもたらすということだ。例えば、後任者を教育するのにも、損害を被った顧客との関係を修復するのにも、また悪影響を受けた周囲の従業員を再教育するのにもお金がかかる。世の災いの多くがそうであるように、採用ミスというものは、問題の根源である従業員がいなくなった後にも長期間にわたって悪影響を及ぼし、会社の財務に損失を与え続けるのである。

採用ミスがもたらす直接的なコストということについていえば、その当事者である従業員が六カ月以上在籍した場合にもたらされるコストはその人の給料の1.5倍にも及ぶことが調査からわかっている。つまり、企業文化に合わない人を雇ってしまった場合、それがまったく経験のない若手社員であっても、その採用がもたらす損失は10万ドルにも及ぶということだ。先の段落で述べたような間接的なコストを考慮に入れなくとも、その損失は多大なのである。

管理者に無駄な時間を遣わせ、深刻なストレスをもたらす

リーダーや管理者にとっては、企業文化に合わない従業員の存在は、通常から抱えている仕事のストレスを数倍にも増幅するものである。その従業員の一挙一動を管理しなければならないストレスや、足並みを揃えさせるために費やす時間やエネルギーは並大抵のものではない。文化に合わない従業員というものは、接触するすべてのものに被害を与えるのであり、上司もその例外ではない。

なぜミスが起こるのか

つながりを重んじる組織内においては、企業文化に合わない人の存在は由々しき問題である。採用ミスはいかにして起こるのか。その答えは複数の組織で共通していた。なぜ企業文化に合わない人を採用してしまったのか。調査を通して得られた回答は次のようなものである。

  • 選抜に十分な時間を費やさなかった
  • 企業文化への適性よりスキル(や経験)を重視した
  • 採用プロセスにおける指標が存在しない
  • 見習い期間を設けなかった

採用プロセスの改善に向けてはどんな方策がとられるべきなのか。本シリーズの中では、「小さくても偉大な会社」を目指す上で企業が直面する様々な問題への対処法を取り上げていくが、今後、採用という課題に対してもじっくり取り組んでいくつもりだ。

原文: Glenn Burr (米スモール・ジャイアンツから翻訳・転載)