
スモール・ジャイアンツの中には、自社が提供する商品やサービスの質だけではなく、会社そのものが社会にもたらすインパクトに大きなこだわりを感じている会社が多い。本記事では、アーカンソー州リトルロックでピザ屋を営むスモール・ジャイアンツ企業のCOO(最高業務責任者)であるウェバー氏が「従業員が活き活きと働ける職場のつくり方」について語ったインタビューの内容を簡単にまとめたものである。
ウェバー氏は2009年に同社に入社。役員がすべて厨房または給仕経験者であり、いわゆる「たたき上げ」である同社においては、他社、ましてや異業界から引き抜かれてきたウェバー氏の存在はまさに異色であった。しかし、現場の経験は欠くものの、リーダーシップや財務に関して豊富な知識や経験をもつウェバー氏の働きは、同社の成長に一役買うことになる。
ウェバー氏の就任以来、4年間で売上は倍になったが、この4年間に最も力を入れたことのひとつが、「リーダーシップ教育」であったという。この4年間で、およそ8万ドルを投資し、マネージャー44人を社外のリーダーシップ・トレーニングに送り込んだ。
会社にとっての成功とは、と問われて、ウェバー氏は売上より利益より何より、「リーダーを育てる」ことだと熱く語る。それも、単に会社のリーダーという意味ではない。会社のリーダーとしてはもちろんだが、会社を取り巻く地域社会のリーダーとして活躍できる人々を輩出したいと考えているという。
同社の経営陣は地域の非営利団体の役員を務めたり、自らの時間を割いてボランティアをしたり活発に活動している。中でも、アワ・ハウス(Our House)というホームレス・シェルターとは会社ぐるみの深い関係がある。例えば、地域のホームレスのために物資を集める活動も年に何回か定期的に行っているという。風邪のシーズンが始まる前には、風邪の予防や治療に役立つ物資を集めたり、夏の終わりには、新学期で学校に戻る子供たちのために物資を集め、学校で使う文具などをバックパックに詰めてシェルターに寄贈したりした。そういった大きな取り組みの他にも、同社の社員が施設を定期的に訪れ調理をしたり、ホームレスの生活から抜け出すために就職活動をしている人たちのために模擬面接をしてあげたりもしているという。
人材育成についてウェバー氏が信じているのは、リーダーが自分の時間をつかって、人を育てる努力をすべきだということ。ウェバー氏は自分が指導にあたる人に対しては、いつでも必要な時に何でも相談に乗ってあげられるようにしているという。一日のどんな時間であってもだ。また、入社してくる人は一人残らずまず握手を交わしてチームの一員として迎え入れる。また、毎月第二土曜日には、「COOを囲む会」を催している。これには、社員なら誰でも参加できるようにしているという。「『COOを囲む会』の主役は私ではなく社員たち。社員がお客様で、私がもてなす側です。リラックスした雰囲気の中で、なんでも聞いてもらいます。会社にとって一番重要なのは彼らだ、ということを実感してもらいたいのです」とウェバー氏は語る。
また、社員の自主性を尊重することが極めて大事だとも考えている。社員の一挙一動を事細かに管理するのではなく、社員一人ひとりが、その人のもつ力を最大限に発揮できるように教育を施し、仕事の遂行に必要なツールを提供する。そしてあとは彼らに任せる。問題があったら何でも、いつでも相談できるように門戸を開いておく。ただし、問題を解決してあげるのではなく、相談にのり、導くというスタンスだ。
起業家、そして、ビジネスに携わるすべての人たちへのアドバイスとして、ウェバー氏は「読書」を挙げる。ウェバー氏の会社でも、全マネージャーに、一日最低でも10分は本を読むように奨励しているという。会社には、ウェバー氏自らが蔵書を寄付して、貸出可能な社内図書館を設けている。「学ばなければ取り残される」とウェバー氏は警告する。しかし、学ぶ方法は読書だけではない。人の話を聞くこと。「自分のデスクを離れて、社員や顧客の話を聞くこと」。そこから学べることも多いという。