「スモール・ジャイアンツ」をつくる「コア・バリュー経営」

今まで、何十という「スモール・ジャイアンツ」の事例を見てきて明らかなのは、そのいずれも、「会社が大事にしたい価値観(コア・バリュー)」を掲げ、社員が一丸となってその価値観を守り、日々の意思決定や行動の基盤としていることです。

会社が「コア・バリュー」を掲げ、それを実践するといったい何が起こるでしょう。

まず、会社の結束が固くなります。「会社として何が大事か」が統一され、共通理解されているため、判断のブレやすれ違いが起こりにくくなります。また、働く人同士の信頼も高まり、なあなあではなく、心から「仲の良い会社」ができます。

そして、会社で働く人たちの一人ひとりが、自分の能力や創意工夫を発揮し、伸び伸びと自由に働いて成果を出せるようになります。近年、「権限委譲」ということが盛んに言われていますが、たとえばサービスの現場で「働く人にすべてを委ねる」というのは現実的には決して簡単なことではなく、経営者にとっては怖いことでもあります。

というのも、「皆さん、今日から、自分で考えて判断して、行動してください」といったところで、個々人が会社が望むような結果を出してくれるかどうかはわからないからです。だから、一般のサービスの現場では、「ルール」や「マニュアル」をもってしてサービスを「均質化」しようとします。その結果、紋切り型な対応となり、顧客の「人間性」を無視した血の通わないサービスになってしまうのです。

「コア・バリュー(価値観)」を統一することにより、働く人はその基盤の上で自分の創造力を働かせて自由にプレイすることができます。その結果、顧客の「人間」と向き合う、血の通った、嬉しいサプライズいっぱいの、心に触れる感動のサービスが生まれるのです。

サービスの現場を例に挙げてきましたが、同じことは、営業職にも、あるいは商品開発の現場にも、経理や法務といった支援部門にもいえると思います。

ひとりの「カリスマ的経営者/リーダー」によって支えられているのではない。会社の中の一人ひとりの「小さな力」を余すことなく活用することにより、どんな大企業にも負けない「大きな力」を発揮するスモール・ジャイアンツ。それを可能にするのが「コア・バリュー経営」なのです。