スモール・ジャイアンツが教える「ほんとうにカッコ良い会社」

アメリカが最たるものだと思うのですが、20年ほど前に「ネット・ビジネス」が台頭を始めてから、「テクノロジー」を筆頭とした新しい産業に偏った注目が集まる傾向にあったと思います。

しかし「スモール・ジャイアンツ」は、そういった「新しいビジネス」だけに偏るものではありません。「スモール・ジャイアンツ」の中には、先に述べたようにフード・サービスもあれば、製造業もあれば、コンサルティングのような情報・知識産業もあれば、俗にいう「ネットの会社」もあります。

大きい会社、お金のある会社、話題性のある派手な会社だけが脚光を浴びるような風潮が長いことアメリカにもありました。しかし現実は、誰もがテクノロジーの業界で働けるわけでもなければ、働きたいわけでもありません。子供たちや若者たちが、テクノロジーの会社だけが「カッコ良い会社」という偏ったものの見方を聞かされて育つとしたら、社会としてこんなに乏しいことはないと思います。

「スモール・ジャイアンツ」は、真の意味で「カッコ良い会社」「立派な会社」とはどんな会社か、ということを身をもって教えてくれます。

真の意味で「カッコ良い会社」とは、「世の中の役に立つ」ことに優先順位をおく会社です。例えば、長野中央タクシーは、お年寄りや身体の不自由な人など、「交通弱者」に配慮したサービスを提供し、「お客様の尊厳を守る」ことを事業目的に掲げていますね。だからこそ、地域住民に愛され、圧倒的なロイヤルティをもつビジネスとして自らを確立しているのです。

真の意味で「カッコ良い会社」とは、「働く人思い」の会社です。アメリカでは2000年の初めから二回も大きな不況に遭遇していますが、不況のたびに「人思い」の文化がある会社とない会社とでも明暗が分かれます。不況だから、コスト・カットだと思慮を欠いた「人減らし」に走り、働く人の信頼ややる気を破壊してしまう企業がある一方で、働く人たちが「私たちは家族だ」と宣言し、皆で不況を乗り切るために自主的な賃金凍結/カットなどの措置をとったがために会社の団結が一段と強まり、経済が回復するにつれて急速に業績を回復した会社の例はひとつやふたつではありません。

昨今、「レジリエンス」という言葉が、経営のバズワード(流行り言葉)のようになっていますが、スモール・ジャイアンツの経営=コア・バリュー経営は、「レジリエンスの経営」であるとも言えます。働く人や顧客のロイヤルティ(忠誠心)に支えられ、苦境への高い耐久力をもち、好機の掌握に長けた「打たれ強い会社」をつくります。